9/07/2014

ブログ

現在,日本時間の,9月8日(月)午前5時。

日本に帰国してから,はや,20日間ほど経ちました。

ホノルルで毎日,このブログを書いていたので,その習慣を続けて,帰国して日本にいながらも,とりあえず,ブログを続けようかと思い,下記のところで,一昨日から書き始めました。

「湯川ポテンシャル。」
http://yukawa-potential.blogspot.com

前にも書きましたが,ホノルルにいるという特別な状況ではないので,日本にいて日々何か特別なことがあるわけではないよなぁと思いつつ,だから果たしてどの程度のブログが書けるのか,かなり怪しいものですが,まぁ,とりあえず。

毎日が特別なのよ~,なんて痒いことを大声で言うつもりはないけれど,しかし,日々日常の特別さは,物事を見つめる視点によりけりだろうから,マインドフルに,参ります。

読んでいただいていたありがたい読者のみなさま,ありがとうございます。湯川の個人的なブログなどたぶん読んでもそんなに得しないと思いますが,得のないことをあえて実行するのがお好きな方は,是非またどうぞ。

では!

湯川進太郎拝

8/20/2014

帰国

現在,日本時間の8月21日(木)の午前4時40分。

帰国した。帰りの飛行機は長く感じた。昼に搭乗したので,あんまり眠くないものだから,目が覚めたまま,息子がごちゃごちゃあれこれと騒ぐのを制しつつ,だいたい8時間ぐらい機内にいたことになる。

成田に到着して荷物を受け取り税関を通って外に出たのが午後4時。ホノルルだとその時点でもう夜の9時。就寝時間だ。眠い。義兄の奥さんと子ども二人,つまりうちの子どもの従兄弟たちが,成田の到着出口に迎えに来てくれていた。サプライズ。ありがたい。

通り一遍だけれど,日本は蒸し暑い。ただ,昨日今日辺りは比較的涼しい方なのではないかな。蝉が盛んに鳴いている。そういえば,ホノルルに蝉はいなかった。

4ヶ月開けていた家は,ちゃんと元のところにあった。親戚の人にときどき見てもらっていたので,家全体が痛んでいる,なんてことはなく,また,幸い空き巣にも狙われず,4ヶ月前のまんまだ。カレンダーも4月のまま。何もかも,4ヶ月前に出たときのまま。まるでタイムスリップしたみたい。さて,この4ヶ月は夢か幻か。

と思えば,ときどきフラッシュバックのように,ホノルルで住んでいた部屋だとか周辺の道々だとかをありありとリアルに思い出すけれど,結局今にしか生きていないから,それらは全部記憶の彼方へと消えていく。リアリティを徐々に失っていく。

まぁしかし,ごっそり4ヶ月間,日本での生活が抜けているわけだから,徐々にチューニングしていきくことにしよう。つい焦ってすぐに元通りにしようと思ってしまうけれど,まぁ,しかし,「サバティカルボケ」を味わいながら,こっちの生活に再び慣れていくことにしよう。

さて,というわけで,このブログ,タイトル的には一応,これで終了である。

こうして日々の出来事を綴るのはそれなりに記録になって良いなと思った。しかし,今回はホノルルで身体心理学という特別な滞在だったから良いけれど,こんなことをこれからも毎日続けていたらそれはそれで負担な気がするし,そもそも,もうすでに今日から何ら特別ではない日々を綴ってもそれはそれでますます,そんなごく個人的な日々の出来事を綴って一体誰にどういう利益があるのかただの阿呆を丸出しぢゃないかと思うので,惜しい気もするけれど,やっぱりこれで終了である。

とりあえず,想像上の読者のみなさま,さようなら。みなさまのおかげで,良い客観的視点を得ることができました。それから,読んで下さっていると教えていただいた友人のみなさまにも,感謝です。

ありがとうございました。

8/19/2014

欲望

滞在127日目。8月19日(火)の午前3時30分。

さて,いよいよ,今日,帰国する。9時にはタクシーを呼んである。お昼前の便に搭乗予定。ホノルルに4ヶ月強住んだわけだが,やっぱり長かったなぁ,うん。

昨日は,スティーブの太極拳の,最後の稽古だった。また是非いずれ習いに来たいと思っているので,最後の稽古というのは,とりあえず,今回の滞在で最後ということで。

また一つ面白い話をしてくれた。太極拳は,上手くなりたい(よくなりたい)と思うと,身体が緊張して力んで硬くなって,なかなか上手くなれない。だから,上手くなりたいという欲望(desire)は,捨てた方が良い。欲望を捨てることで,身体がリラックスして,そのうち上手くできるようになる。上手くなりたければ,上手くなりたいと思わない方が良い,ということだ。

これは真理である。

太極拳とは,身体で得た真理を人生全体に広げていく(あるいは人生の本質あるいは哲学を太極拳を通して理解する),そういう身体哲学なのだ。スティーブの師であるPang先生のいう,「太極拳は哲学だ」ということの一つの意味は,たぶん,そういうことだと思う。

○○したいと思うほど,○○できないから,○○しない方が良い。

繰り返すけれど,これは真理である。

例えば,心理学的にも,幸せになりたいと思えば思うほど,実は,幸せになれないことが分かっている。だから,幸せになりたければ,幸せになりたいと思わない方が良いのだ。それから,思考抑制のシロクマ課題の通り,思考を抑制しようと思うほど皮肉にも抑制できないから,抑制しようと思わない方が良いのだ。

このことを強引に一般化すれば,要するに,あらゆる欲望は捨てた方が良いのである。

仏教的には,欲が苦を生むから,欲を捨てよと教える。道教的には,過剰な欲は陰陽のバランスを崩すから,欲を抑えよと教える。欲を捨てたり減らしたりしたところに,本質的な安穏がある。

スティーブがこの欲望の話をし終わったとき,隣にいた御年85歳のLilianおばあちゃんが僕の腕をつつき,「Remember this」と僕の目を見てそっと言った。今のスティーブの話,よく覚えておきなさい,という意味だ。よく覚えておきます。Lilianおばあちゃんとは最後,ハグをしてお別れした。どうもありがとう。

8/18/2014

心配

滞在126日目。8月18日(月)の午前4時。

いよいよ明日,帰国。荷造りを始めると,ああ帰るのだなという実感が湧いてくる。

持ってきたよりも当然,4ヶ月の滞在で物が増えている。僕自身の荷物で増えた物は,本が4冊,ティンシャとシンギングボウル,Tシャツ3枚と,後はハワイな首飾りぐらい。増えた物は主に子どものオモチャやら,サマースクールでの制作物やら。服も増えてる。後は食品類。これ,全部,持って帰るのだろうか。それからお土産類。これは仕方がない。

ということで,スーツケースに収まりきらないから,こちらでスーツケースを追加購入。それでも足りないから,今日,もう一つ追加予定。

ちょっとした引っ越しなわけだから,とにかく,移動前後はバタバタするのは覚悟しないといけない。帰ってから落ち着くまで時間がかかるけれど,それは仕方がない。それに今からそのことを考えても仕方がない。そうそう,こういうのをworryというんだな。人間はつい,先のことまで考えて,あれこれ心配してしまう。もちろん,計画性のある行動をするために,ある程度は必要だけれど,それに囚われ過ぎてはいけない。囚われ過ぎると,その心配自体がネガティブ感情を生み出す。

今ここでやるべきことは,とにかく,荷物をまとめること。でもって,明日は飛行機に間に合うように空港に行くこと。帰ってからの整理は,帰ってから考えれば良い。

今日は,太極拳の稽古最後の日。気負ってやっても稽古は稽古だから,まぁ,いつも通り普通に稽古しよう。スティーブとも当分,お別れだ。

ハワイでは,しかし,ロバート(ボブ)とスティーブ,良師二人に会えて,本当に良かった。

8/17/2014

ハワイ料理

滞在125日目。8月17日(日)の午前4時30分。

いよいよ日本に帰る日が近づいてきた。さて,最後に食べておきたいハワイの料理は何かと言えば,やはり,ポキだ。POKE。ポキは,ハワイ語で「切り身」という意味らしい。ポキと言えば大体,アヒ(マグロ)。アヒのポキ,アヒ・ポキが良い。日本風に言えば,マグロのぶつ切りの漬け。しかしなんでこれ,日本で流行らないかね。マグロの山かけみたいに,すでに似たような料理があるからかな。

ガーリックシュリンプも良い。昨日,ウォルマートの入り口にある,L&L Hawaiian BBQ(L&L Drive-Inn)で,サイミンとロコモコと一緒に食べてきた。L&Lは,これまたハワイの至るところにある,そこそこリーズナブルなハワイ料理の定番プレートを出すお店だけれど,渋谷に日本1号店ができたそうだ。ネットで見る限り,見た目は同じ物を出している模様。さて,量と味はどうなんだろう。Teddy's Bigger Burgersの日本店も東京のどこかにあって,Yammy BBQの日本店も名古屋にあるらしい。

で,Yammyを検索してみたら,名古屋に2店舗。しかし,Yammy Hawaiian BBQってなってるぞ。YammyはKorean BBQなんだけどな,こっちでは。プレートに,たっぷりのライスとBBQチキンやBBQビーフ,これにたっぷり4種類の野菜(キムチとか)の付け合わせ。Me's BBQとともに,ずいぶん食べた。

食,というのは本当に快楽である。美味い。楽しい。気持ちが良い。身体で直接感じる快楽。さて,しかし,これもまた欲望であり,欲望には限りがない。美味い物を求めてお金をかけてしまう。一方で,腹が減っているときにはつい,がつがつ食べてしまう。食べ過ぎ。胃のもたれ。胸やけ。ゆっくり味わって食べる。そうすれば別に高いものでなくても十二分に美味い。身体にも良い。マインドフルに,観を用いて,質素に美味しく食べる。そうなりたい。

が,たまにはポキとかガーリックシュリンプとかBBQチキンとかも良いねぇ。人間ってのは,さもしいなぁ。

8/16/2014

滞在124日目。8月16日(土)の午前5時30分。

いよいよ帰国の日も迫り,ラストスパートということで昨日もビーチに行ってきた。足腰が痛い(笑)。陸に上がってもずっと波に揺られているような感覚が続く。まさにビーチ酔い。

今まさにお盆の時期で,日本人観光客のピークなんだと思うのだが,ワイキキの東の方,ダイアモンドヘッド寄りの方,カピオラニ公園の方には,ほとんど日本人もいない(ように思える)し,混んでいるようには思えない。6月7月の頃と同じだ。

たぶん,日本人の多くは,ロイヤルハワイアンとかモアナサーフライダー辺りの,中心の方のビーチで遊んでいるのかな?行ってないから分からないけど。

いやしかし,砂浜と言っても,波が高いのでその砂がさらわれて,岩礁が数メートルのところからむき出しなので,今度来るときはマリンシューズを持ってこよう。岩場にはそこそこ色んな魚が泳いでいる。

耳の奥が,波のリズムで,揺れている。

8/15/2014

中心

滞在123日。4月15日(金)の午前5時。

まもなく帰国と言うことで,奥さんが各方面への手土産を大量に買い込みにいくミッションを遂行している間,僕は子どもをプールとビーチへ一日連れて行った。

もう穏やかな波には飽きて,大きな波が来る方へ来る方へとせがむ。

そこそこ波が高いところで子どもを見ながら踏ん張っていると,すねと足の甲が痛くなる。そう,だから,バランスを取ろうとして踏ん張って立とうとすると,すねと足の甲が痛くなるのだ。太極拳で痛くなっていたところと全く同じ箇所である。

だから,太極拳でも,バランスを取ろうとして踏ん張っているということである。バランスを取ろうとするということは,バランスが悪いということであり,そのバランスの悪さはおそらく,歩幅(スタンス)と腰腹の位置や向きだろうということが分かってきた。ここのところを上手く調整すれば,すねと足の甲の痛みは減るはずだ。

実際,歩幅を狭くしながら,すねと足の甲へ筋肉的負担を掛けないよう意識しつつ練ると,痛みはずっと軽減した。だからこの方針で間違っていない。さらに身体操作を楽にするために,腰の縦と横の回転をうまく使うようにすれば,さらに痛みは軽減すると思う。きちんと操作できていれば,力は使わなくて済むはずだからだ。

なお,力を使わないというのは一つの言い方であって,当然,全くゼロではない。動かすわけだから,そりゃ,わずかには使う。力を入れすぎたり,力でもって無理矢理にポーズを作ったり,それらしく動いたりしない,という意味である。ただ,太ももには力が入る。ここだけは入る。それはスティーブもいつも言っているし,Pang先生の本にもそう書いてある。

身体の中心は尾てい骨であり,そこを意識して感じるようにする。尾てい骨を感じる際には,腰を開く。経穴としては,「命門」を開く,と表現される。そしてその尾てい骨を中心に,手の先から足の先までとつなぎ,4つの手足を同時に一体として感じるようにする。

精神(意識)の中心は丹田であり,ここに呼吸(息)が出入りする,つまり気(生命エネルギー)が貯まる,あるいは,ここを中心に全身を気が巡るようなイメージを意識する。道家的には踵で息をするイメージだ。あるいは,足の裏の「勇泉」や手の平の「労宮」から気が出入りするイメージ。天と地と一体化する。

そしておそらく,物理的なパワーの源は太ももにある。筋力を使う部分はここぐらいで,後は柔らかく,リラックスする。だから,この一番太い筋肉に,パワーを貯める。

8/14/2014

腰の回転

滞在122日目。8月14日(木)の午前5時。

昨日の太極拳で,スティーブはいくつかまたポイントになることを教えてくれた。

まずは歩幅(スタンス)のことについて。歩幅は自分がちょうど良いところを見つける必要があるけれど,Pang先生は,ときに歩幅を狭く,ときに歩幅を広く取って稽古していたと言っていた。これは,歩幅が狭いときはinternal powerを養う感じになり,歩幅が広いときはexternal powerを養う感じになる,ということだ。

それから,これはもう,4ヶ月前の当初からずっと言っていたことだけれど(つまり,言葉としてはずっと耳に入っていたけれど),昨日,ようやく,そうかそういうことかと身体的なニュアンスが読み取れたことがある。

それは,ウェストを回転させる,ということだ。

スティーブは盛んに,Waist Turn!という。つまり,身体の向きを変えるときはもちろんのこと,前に進んだり後ろに進んだり,身体や股関節を開いたり,要するに何かしら身体を動かすときにいつも,これを言っていた。これまではあまり考えず,当たり前の動作の一つとして腰を回転させていたけれど,昨日,なんとなくこの言葉が気になったので,この腰を回転させるということをいつもよりも意識してやってみた。すると,格段に動きがスムーズになった。

つまり,腰腹をもっと,立体的に使う必要があるのだ。

これまで腰の縦の回転をずっと意識してきた。尾てい骨を意識して骨盤を立てることが太極拳の要であることは間違いなく,スティーブもそのことを一番伝えようとする。この,尾てい骨を意識して丸め込み,下腹を持ち上げる操作は,腰腹の「縦」の回転なのだ。

これに「横」の回転をもっとうまく使うようにする。というか,もう少し「横」の回転を意識的に使うようにする。そうすると,腰腹がずっと立体的に動くようになる。縦の回転と横の回転をうまく使うのだ。そうすると,がぜん,身体操作が楽になり,気持ちよくなる。不思議である。

腰腹が武術の要であることは,自明である。「腰が大事なのね」と言葉では誰でも分かるが,しかし,言葉として単純だからこそ奥が深い。ここの使い方を徹底的に追求することこそ,武術を追求することでもある気がする。

昨日はもう一つ,これも以前から言っていたけれど,この腰の回転の感覚的発見に刺激されて,言っている意味が身体的に実感できたことがある。それは,蹴りの動作で足を上げるとき,足をliftするのではなくdraw (up) するのだ,という点だ。前から確かに言っていたけど,その意味がようやくピンと来た。

持ち上げようとすると(lift),足は重量があるわけで,それだけ筋力を使って動作しようとしてしまう。そうではなく,引き上げるのだ(draw up)。そうすると,楽に足が上がる。引き上げるためには,腰腹を使う必要がある。つまり,足を上げる動作の際に,腰の縦の回転(尾てい骨の丸め込みと下腹の引き上げ)と連動させるのだ。

おそらく,そうすることで,軸足に上半身(体重,重心)が全部載って蹴り足が自由になり(蹴り足でバランスを取る必要がなくなるから),また股関節も足が持ち上がりやすい角度になり,さらに下腹の引き上げによって腹筋が作用する。

だから,スティーブはいつも,足を上げるときに尾てい骨を意識せよ,と言っていたのだ。尾てい骨を意識して腰を縦に回転して,足を引き上げる。なるほど。

僕がいつもmartial artisticな発見やヒントが得られて感謝していると言うと,スティーブは笑いながら,でも自分はmartial artistだという意識はない,だって全然強くないし,ケンカになったらどうやって相手をなだめるかをまっさきに考えるし,ただtaichiが好きでtaichiをやっていてよかったことがたくさんあるからtaichiをやっているだけだ,と謙遜する。

スティーブは本当にいつもニコニコしている。笑顔がとても魅力的だ。笑顔で自分も周りも丸くする。これこそ道家実践の基本である。ロバート(ボブ)の本”The Tao of Stress"にあるように,道家の基本は微笑みなのだ。そのロバートが出会った中国の洞窟に隠居する道士のように,スティーブの笑顔も,他者を優しく包み込むような笑顔である。だからこそ,スティーブは本当の意味での太極拳家taichi masterだと,そう思う。(ちなみに,masterと言うと,私は全然masterではない,とスティーブは言うけれど)

全然関係ないけれど,下記,記録として。

昨日,うちの奥さんの友人のジョアンというローカルの女性と夕食を供にした。ワード・エンターテイメントの1階にある「ブカディベッポ」というイタリアンのお店。これがまず日本ではあり得ない面白いお店で,初めての来店のときは,なんと,シェフやウェイター・ウェイトレスのみなさんがごちゃごちゃ忙しく働いている厨房を見学をさせてくれるのだ(笑)。シェフのみなさんも面倒くさがらず挨拶してくれる。あまりの唐突かつ奇抜なおもてなしで,思わず爆笑してしまった。で,さらに笑えるのが,その厨房には特別席が一つ設けられていて,そこで食事もできる(笑)。厨房の中に設置されたテーブル!もちろん,その特別席を選んだお客さんは,訪れる初来店のお客さんにギョッとされるので,その都度笑顔で挨拶しなくてはいけないけどね。味は抜群だし量も多いし値段もリーズナブルだし店員の対応も抜群(全員が笑顔で親切で気配りが行き届いている。たぶん,それが店のウリの一つで,全員しっかり訓練されている)。キッズメニューはどれも5ドル(それも,大人でさえ食べきれない量)。お奨めである。

8/13/2014

静寂

滞在121日目。8月13日(水)の午前4時30分。

太極拳を練るときのイメージとして,虎が獲物を狙うように動く,という例えをスティーブは使うけれど,昨日はもう一つ面白い例えを使っていた。

寝ている赤ちゃんを起こさないように。

寝ている赤ちゃんのそばを通らなければならない経験がある人はわかるはずだ。赤ん坊は寝るのが仕事であり,せっかく寝ているところを絶対に起こしてはならない。そのために,音を立てないように静かに歩く。抜き足差し足忍び足。

抜き足差し足をするためには,片方の足にしっかりと体重が載っていないといけない。そしてもう一方の足を移動して,ゆっくり体重を移動する。

だから,太極拳の稽古中は,スティーブがする説明のための声以外は,何も音はない。聞こえてくるのはせいぜい,風の音や鳥の声ぐらいだ。

よく日本の太極拳教室なんかだと,中国のゆっくりした音楽が流れていたりするが,あれは止めた方が良い。YoutubeやDVDなどでもなぜかそういう中国の音楽がバックに流れている。確かに,こういう感じでゆったり動きましょう,とリズムに合わせる効果というのはあるかもしれないけれど,太極拳本来の良さが削がれる気がする。太極拳は,もっと心を静かに穏やかにしていくものであり,そのためにはむしろ,音楽さえも要らない。

つまり,本来,太極拳を練るには,何もない方が良いのだ。自然になることを,自然と一体化することを求めているわけだから,そこには,たとえ柔らかでゆったりした中国の音楽であろうと,人工的に作り出した音は必要ない。

そう。スティーブの太極拳教室に最初に顔を出して,何か違うなぁ,これはいいなぁ,と思った大きなポイントは,この,バックに中国風の音楽を鳴らすという,太極拳教室にありがちな付随物がないというところだったことを,今更ながら思い出した。

そうした静寂の中で太極拳を練るのが良いのだ。取って付けたような音楽など必要ない。

静寂の中,ときに風が吹き抜け,ときに鳥のさえずる声が聞こえる。太極拳とはこういうところで静かに練るものなのだ。音楽など鳴っていたら,それに気を取られてしまう。ありがちな中国の音楽を流して,雰囲気を中国風に仕立てる必要など全くない。

8/12/2014

魚と鳥

滞在120日目。8月12日(火)の午前4時40分。

今週から日本はお盆休みの週だと思うので,さぞワンサカと日本人観光客が増えるのかと思いきや,まぁ,確かにそこかしこに日本人の家族連れが増えたことには増えたけれど,想像していたよりははるかに少ない。

去年も同じ頃に来たけれど,厳密には8月の最初の週だったので単純に比べることはできないが,だいたいこんなものだったような気がする。昔よりも日本人観光客はずいぶん減ったと,去年来た時に誰かに聞いた記憶がある。

ただ,今週続々と来るかもしれないので,どんな様子になるのか,観察していよう。

どこのビーチでもだいたい海には,イワシか何かの大群の魚影が見えるわけだが,みなさん判で押したように「さかなだ!さかなだ!」と感動する。ビーチに行くとそこかしこでそういう声が聞こえる。たしかに僕も最初はその数に感動した。だから,魚影を見て驚いている人は,初めてハワイのビーチに来た人だということが分かる。

それから,ほんのときどきだけれど,これは日本人に限らず,ハトに餌をやってしまう観光客がいる。普通やらない。やってしまう人は,たぶん,ハワイに初めて来た人なのではないかと思う。ハトの怖さを知らないのだ。こっちでは,とにかくハト(鳥)に餌をやらないのが鉄則。とにかく数が多いし,彼らは逞しい。やろうものなら,ヒッチコックさながら,場合によってはものすごいことになりかねない。

食べ物のカスだとかが散らかっていたり,ましてや,食べ物を途中で放りだしたりしたままその場を離れて遊びに行こうものなら,いつの間にかハトが群れてきてさんざんなことになる。ハトが食べ物を取り合ってそこら中がとっちらかって羽だらけになり,プレートから荷物から全部ひっくり返される。まぁ,見ていてあまり美しい光景ではない。

と,こうやって書くと「私はハワイに慣れてるぜ」感が自分でもしてちょっと嫌だけれど,しかし,やっぱりハトにむやみに餌をやると周りに迷惑だから,止めた方が良いよと,言いたくなる。・・・けど言わない。ハトが集まり出したら,その場から離れることにしている。さようなら。

そんなにハトが好きだったら,一度,「ハト屋敷」に行くといい。「とりだ!とりだ!」と大群に感動できるかもしれない。ワイキキビーチにあるマクドナルドの横の道を山側に向かって入っていけばすぐに分かる。見学無料。ただしたぶん個人宅だから,写真撮影とかはしない方が良いかもね。