8/14/2014

腰の回転

滞在122日目。8月14日(木)の午前5時。

昨日の太極拳で,スティーブはいくつかまたポイントになることを教えてくれた。

まずは歩幅(スタンス)のことについて。歩幅は自分がちょうど良いところを見つける必要があるけれど,Pang先生は,ときに歩幅を狭く,ときに歩幅を広く取って稽古していたと言っていた。これは,歩幅が狭いときはinternal powerを養う感じになり,歩幅が広いときはexternal powerを養う感じになる,ということだ。

それから,これはもう,4ヶ月前の当初からずっと言っていたことだけれど(つまり,言葉としてはずっと耳に入っていたけれど),昨日,ようやく,そうかそういうことかと身体的なニュアンスが読み取れたことがある。

それは,ウェストを回転させる,ということだ。

スティーブは盛んに,Waist Turn!という。つまり,身体の向きを変えるときはもちろんのこと,前に進んだり後ろに進んだり,身体や股関節を開いたり,要するに何かしら身体を動かすときにいつも,これを言っていた。これまではあまり考えず,当たり前の動作の一つとして腰を回転させていたけれど,昨日,なんとなくこの言葉が気になったので,この腰を回転させるということをいつもよりも意識してやってみた。すると,格段に動きがスムーズになった。

つまり,腰腹をもっと,立体的に使う必要があるのだ。

これまで腰の縦の回転をずっと意識してきた。尾てい骨を意識して骨盤を立てることが太極拳の要であることは間違いなく,スティーブもそのことを一番伝えようとする。この,尾てい骨を意識して丸め込み,下腹を持ち上げる操作は,腰腹の「縦」の回転なのだ。

これに「横」の回転をもっとうまく使うようにする。というか,もう少し「横」の回転を意識的に使うようにする。そうすると,腰腹がずっと立体的に動くようになる。縦の回転と横の回転をうまく使うのだ。そうすると,がぜん,身体操作が楽になり,気持ちよくなる。不思議である。

腰腹が武術の要であることは,自明である。「腰が大事なのね」と言葉では誰でも分かるが,しかし,言葉として単純だからこそ奥が深い。ここの使い方を徹底的に追求することこそ,武術を追求することでもある気がする。

昨日はもう一つ,これも以前から言っていたけれど,この腰の回転の感覚的発見に刺激されて,言っている意味が身体的に実感できたことがある。それは,蹴りの動作で足を上げるとき,足をliftするのではなくdraw (up) するのだ,という点だ。前から確かに言っていたけど,その意味がようやくピンと来た。

持ち上げようとすると(lift),足は重量があるわけで,それだけ筋力を使って動作しようとしてしまう。そうではなく,引き上げるのだ(draw up)。そうすると,楽に足が上がる。引き上げるためには,腰腹を使う必要がある。つまり,足を上げる動作の際に,腰の縦の回転(尾てい骨の丸め込みと下腹の引き上げ)と連動させるのだ。

おそらく,そうすることで,軸足に上半身(体重,重心)が全部載って蹴り足が自由になり(蹴り足でバランスを取る必要がなくなるから),また股関節も足が持ち上がりやすい角度になり,さらに下腹の引き上げによって腹筋が作用する。

だから,スティーブはいつも,足を上げるときに尾てい骨を意識せよ,と言っていたのだ。尾てい骨を意識して腰を縦に回転して,足を引き上げる。なるほど。

僕がいつもmartial artisticな発見やヒントが得られて感謝していると言うと,スティーブは笑いながら,でも自分はmartial artistだという意識はない,だって全然強くないし,ケンカになったらどうやって相手をなだめるかをまっさきに考えるし,ただtaichiが好きでtaichiをやっていてよかったことがたくさんあるからtaichiをやっているだけだ,と謙遜する。

スティーブは本当にいつもニコニコしている。笑顔がとても魅力的だ。笑顔で自分も周りも丸くする。これこそ道家実践の基本である。ロバート(ボブ)の本”The Tao of Stress"にあるように,道家の基本は微笑みなのだ。そのロバートが出会った中国の洞窟に隠居する道士のように,スティーブの笑顔も,他者を優しく包み込むような笑顔である。だからこそ,スティーブは本当の意味での太極拳家taichi masterだと,そう思う。(ちなみに,masterと言うと,私は全然masterではない,とスティーブは言うけれど)

全然関係ないけれど,下記,記録として。

昨日,うちの奥さんの友人のジョアンというローカルの女性と夕食を供にした。ワード・エンターテイメントの1階にある「ブカディベッポ」というイタリアンのお店。これがまず日本ではあり得ない面白いお店で,初めての来店のときは,なんと,シェフやウェイター・ウェイトレスのみなさんがごちゃごちゃ忙しく働いている厨房を見学をさせてくれるのだ(笑)。シェフのみなさんも面倒くさがらず挨拶してくれる。あまりの唐突かつ奇抜なおもてなしで,思わず爆笑してしまった。で,さらに笑えるのが,その厨房には特別席が一つ設けられていて,そこで食事もできる(笑)。厨房の中に設置されたテーブル!もちろん,その特別席を選んだお客さんは,訪れる初来店のお客さんにギョッとされるので,その都度笑顔で挨拶しなくてはいけないけどね。味は抜群だし量も多いし値段もリーズナブルだし店員の対応も抜群(全員が笑顔で親切で気配りが行き届いている。たぶん,それが店のウリの一つで,全員しっかり訓練されている)。キッズメニューはどれも5ドル(それも,大人でさえ食べきれない量)。お奨めである。

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