8/06/2014

静かな力

滞在114日目。8月6日(水)の午前4時50分。

昨日は,午後に,関谷さんに車を出してもらって,ラニカイ・ビーチに行ってきた。「ラニカイ」とは「天国(lani)の海(kai)」という意味だそうである。全米一美しいビーチという触れ込み。ちなみに,全米一美しいビーチというのは,複数あるらしい(関谷さん情報)。

ワイキキの海の色が青や水色だとすると,ここの海の色はどちらかというと緑。青緑。まぁとにかく綺麗で素晴らしい景色である。ホントにそこそこ大きなウミガメが泳いでいた。

ワイキキから車で小一時間。昨日は平日だったからか,駐車スペースも空いていて,ビーチも人が少なくて良かった。以前に隣のカイルアビーチに来た時は,ずいぶん混んでいたけど,あれはローカルの人たちがまだ夏休みだったからかな,もしかしたら。

さて,連日,太極拳の稽古。昨日も早朝から,スティーブが別のところでやっているクラスに参加させてもらった。そこで,一昨日の話の続きを教わった。その,緩める,というところに関して。

緩めると言っても当然,全身脱力するわけではない。仄かな筋緊張はあるわけだが,しかし,柔らかく動く。これがその,猫(虎)が獲物を狙って忍び寄るときのように(like a cat, like a tiger),ということだ。

このとき,尻のほっぺた(cheeks)のところに力が入ってたら柔らかく動けないでしょう,だから,ここは緩めなさい,ということである。

しかし実際,スティーブの通りに動こうとすると,真似しようと維持するからつい色んなところに力が入る。その上で,練っていくことで柔らかくしていく,柔らかくなるように練っていく。力を込めない。No power!太極拳は力を使わない。スティーブもずっと先生に,力を使うなと言われてきて,最初は全然意味が分からなかった(なぜなら,先生の通りに動こうとすると力が入るから),と言っていた。通る道は同じだ。こうして,柔らかさというのを探求する旅に出ていく。

昨日の言葉で面白いと思ったのは,こうした動きを表現した,quiet muscleという言い方。「静かな筋肉」,あるいはその先に伝えようとしていたニュアンスとしては「静かな力」と言ったところだ。静かな筋肉。これはまさに,言い得て妙,太極拳をするときの身体感覚にフィットする,絶妙な表現。

そして,もう一つ,太極拳は,エネルギーを外的に放出するのではなくて,内的に貯めるのだ(conserve the energy),と言っていた。Pang先生の教えでは,この内的に貯められたエネルギーが,身体と精神の栄養になるのだ,とも言っていた。

放出するのではなく貯めるのだ。なるほど確かに貯める(貯まる)感じは,太極拳を練ってみれば,感じられる。そう,太極拳は,エネルギーを貯める感じなのだ。で,実際に練りながら,確かに貯まる感じなのだ。だから,稽古中,気分が良いのだ。これを人によっては,気を貯める(気が貯まる),と表現することもあるだろう。

うううむ,深い。ような気がする。つまり,これ,言葉で言えば簡単だし,はいそうですねなるほどね確かにそんな感じですねと,なんとなく分かった気になるけれど,たぶん,この考え方の違いは,武術としては,想像以上に大きいように思う。というか,想像以上に武術として重要なポイントであるように思う。まだ完全に論理的に整理しきっていないけれど,感覚的には,ここはかなり重要なポイントであるように感じる。内家拳(internal martial arts)と称する由縁がここにある。

いずれにせよ,太極拳は,虎が獲物を狙うように,静かに柔らかくじっくりと動く。そうして心と体にエネルギーを貯めていく。

0 件のコメント:

コメントを投稿