8/08/2014

歩幅と体重

滞在116日。8月8日(金)の午前3時50分。

ハリケーンが2つ,ハワイ諸島に接近中である。IselleとJulio。まさにダブルハリケーン。

こちらはハリケーンの時に停電や断水が起きやすいらしく,さっそくスーパーでは水のペットボトルの買い占めが起きている。どこの国も同じだね。今ちょうど,IselleがBig Islandに到達したところ。今日の午前中は,オアフ島も荒れそうか。二発目のJulioは,北側に逸れそう。いずれにしても,あんまり荒れない方が良いね。停電や断水は,やっぱり大変だろうから。

さて,昨日の足の痛みからスタンスに至る話の続き。

歩幅(スタンス)が広いと,バランスを保ったり動いたり移動したりするのに,どうしても力を使う。特に下半身には負荷がかかる。足の痛みはそのためだろうと考えられる。だから,歩幅を狭めた方が良い。ここで,歩幅を狭めることで力を使う必要がなくなるので,そうすることで身体の緊張が緩む。その結果,重心が落ちる。ここに,武術的な身体操作の妙があった。

一見歩幅を狭く(短く)すると,身体(上半身)の位置は高くなるので,重心が上がるように思える。円を描くのに使う,あの「コンパス」を想像して欲しい。針と針(鉛筆)の間が広ければコンパス(の重心)は低くなり,狭ければ高くなる。同じように人間も,歩幅が広ければ重心が下がり,狭ければ上がる。

しかしこれは見た目の物理的な話であって,武術的には少し違う。スティーブとのやりとりで,ここのところが少し分かってきた。

スティーブは,歩幅が狭ければ体重が落ちる,という。

これは一瞬,矛盾しているように思える。そしてこのことは,空手の稽古のときにも,うすうす疑問に思っていたことである。歩幅をもう少し狭くせよということと,体重(重心)を落とすということとは,何か矛盾しているように感じていたのだ。しかし,どうして,これは矛盾していないのだ。

どういうことかというと,歩幅が広いと,どうしても力を使わざるを得ない。そのために身体が緊張している。武術的には,それではいけない。歩幅を狭めることによって力が抜ける。力を抜くことで,緊張が解け,リラックスし,ソフトになり,その結果,ふわりと体重が落ちる,というのだ。

もう少し厳密に言えば,体重(身体の重心)は実際には落ちていないかもしれないが,身体が緩む,ソフトになることは確かであって,そうして身体から緊張が解けることを身体感覚として体重が落ちる(the weight drops)と表現している,そういう感じがする(体重が落ちる感じがする)からそう表現している,とスティーブは言っていた。

そうして柔らかくリラックスすると,自然,腰が落ちる。よく武術では腰を落とせと言われる。それは,リラックスして柔らかく落とせということなのだ。何も物理的な重心を低くせよ,という意味ではないのだ。ここのところを勘違いすると,歩幅を広げて重心を低くしようとしてしまう。

歩幅が広いと動きにくくなるので無駄な筋肉を使う。その結果,身体は緊張しすぎになる。これでは武術的にはよろしくない。居着いてしまう。居着かないためには,リラックスしている必要がある。そのためには,歩幅は必要以上に広げてはいけない。自然体(基立ち)が理想的な立ちであることはよく言われるが,まさに基立ちは狭い歩幅で自然に緩く立っている状態だ。つまり,居着かないためには歩幅は広すぎてはいけない。

このことを,ロッキー・マルシアノ(Rocky Marciano)という伝説のヘビー級ボクサーのエピソードを踏まえて教えてくれた。ヘビー級としては小さい身体ながらも巨体の相手を倒しまくり,49戦49勝無敗43KOという驚異的な戦歴を残したチャンピオンだ。その強さのポイントは歩幅。歩幅を狭くすることで重心の位置が安定し,身体のバランスとスピードが生まれ,体重が落ちたために,パンチ力がアップした,ということらしい。

なお,最適な歩幅というのは人それぞれだから,こうしたことを踏まえて,自分なりにベストな歩幅というのを探っていく必要はあると,スティーブは言っていた。力を使わないで楽に動けるところがあるので,それを見つけなさい,ということである。

いやはや,こんなことは分かってるよと,達人諸氏には言われそうだけれど,しかし,体感しながらでないと気がつかないものなのだ。疑問があってそれを解消するという探求の過程がないと,ただ言われるだけではなかなか分からない。自らの身体でしか理解できないことがある。

歩幅が狭い方が,体重が落ちて腰が落ちるのだ。

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