5/22/2014

楊式

滞在38日目。5月22日(木)の午前9時30分。

太極拳と一口に言っても,いろいろ種類がある。伝統的な流派(伝統拳)として,陳式・楊式・呉式・武式・孫式。これとは別系統として,道教の武当式(太和拳)。太極拳の源流は陳式だと言われている。そこから派生した楊式・呉式・武式,そしてこれに形意拳と八卦掌を混ぜたのが孫式。

制定の24式とか48式といった健康体操あるいは表演武術としての太極拳(制定拳)は,楊式をベースに呉式や武式も加味して再編された新しい現代的な太極拳,ということになる。だから,太極拳のイメージに最も近い代表的な流派が,楊式である。ホノルルに来てから,武当式(太和拳)の他に,この伝統楊式も習っている。

この伝統楊式の套路は長い。108式だったか85式。とてもホノルル滞在中に全部覚えられない。動きを覚えようとするプロセスは武術稽古の醍醐味であり,それはそれで楽しい部分ではあるものの,肝心の,覚えた後の練るプロセスには到底達しない。

スティーブに習いながら,半面そう思っていたところ,ネットで面白い套路を発見した。この,伝統楊式の長い套路のエッセンスを取り出した「10式」(最初と最後の動作を除いて8式という場合も)というごくごく短い套路があるのだ。

『老子と太極拳』の著者である清水豊氏に言わせれば,最高の太極拳は,楊式108式のエッセンスを取り出して再編された鄭子太極拳だが,その鄭子でさえ37式である。だから,この10式(8式)など,エッセンスをちゃんと取り出せているかどうか分からない。本来大切な重要なところも削り取られているはずだ。しかし,たぶん,伝統楊式の人たちが考えて作ったんだろうから,良くないわけではない。実際,太極拳のイメージである代表的な動きで構成されてはいる。

その辺りには目をつぶってもこの10式(8式)の良いところは,とにかく場所を取らないこと。108式や85式のように左右前後にあまり移動しないから,せいぜい2畳もあれば十分だ。武術稽古は毎日することに意味があるから,自宅の部屋などの狭い場所でも稽古できるものの方が良い。空手はこの条件にぴったり合う。太極拳は場所を取る,と前にこのブログで書いたけれど,この10式(8式)ならば,全く場所を取らないのでちょうど良い。

そして,これであれば,スティーブに習った伝統楊式の動きをそのまま練ることができる。套路は違うけれども,構成要素は同じなので,動きの質をそのまま自宅で稽古できる。

武当式(太和拳)は,套路としてはそれほど長くはないけれど,動きがやや独特で難易度の高い動作も多い。その点,この10式は,もちろん太極拳らしい動きというのは練らないと身体に表れないけれど,ものすごく複雑で難易度の高い技,というのは含まれていない。

武当式はこの半月ほど毎日練ってきたけれど,最初の印象からだいぶ変わってきた。練れば練るほど,どうも身体的に合う感じが足りない。ピンと来ないと言っても良い。一方で,伝統楊式の方は,練れば練るほど,身体的に合う感じが高まってきた。

スティーブに習っている108式か85式をそのまま覚えて帰ることはできないけれど,この10式(8式)にまとめていけば,日本に持ち帰って自分で練ることができそうだ。もちろん,練り具合を高めるには,日本でも良い師に巡り会えることが,非常に重要だけれど。

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