滞在45日目。5月29日(木)の午前5時。
尾てい骨の辺りをまっすぐ立てて(=腰を立てて),腰(=股)を開いて,足の支えと力を手に伝える感じを,スティーブに教わった。ふむなるほど,套路の中でよく出てくる太極拳の立ち方と動きがあるが,そのときのニュアンスというのはこういう感じか。太極拳は,主にはこの感じを練っているんだな。
大地にしっかり根づいて,その大地の力を,安定した腹と腰を通して,上半身そして腕と手に伝える。呼吸とともに滑らかに柔らかく伝える。下半身と上半身を滑らかにそして力強くつなげるには,腰と腹の安定が決め手になる。スティーブはだから,始終,腰腹のところに注意するよう教えている。ここが太極拳の要なのだ。
もちろん,ここがあらゆる武術の要である。空手とて同じである。しかし,面白いのは,説明の仕方が違うところだ。空手の場合,あるいは,師である小林先生(や西田先生)の場合と言っていいかもしれないけれど,「腹」の操作を中心にこの部分の大切さを解くのに対して,スティーブは「腰」の操作で説明しようとする。でもおそらく,同じことを言おうとしている。
というのも,身体感覚的には,結果的に同じになる。というか,たぶん同じことを言っているのだろうという前提で実際に身体を練ると,合点がいく。表から説明するか裏から説明するか。
太極拳の場合,あるいは,スティーブの場合なのかもしれないけれど,もう一つの特徴は腰を「開く」ということを盛んに言う。腰を開くことで必然的に尻が締まる。空手では,尻や太もも裏側から締め込むように教わるが,これもまた,表から説明するか裏から説明するかの違いかもしれない。太極拳の場合,空手ほど締めないかもしれないけれど,言おうとしていることは同じなのかもしれない。
それぞれのやり方で身体を練ってみると,次第に分かるだろう。一つのところに収斂していけば,それはそれで正解であり,収斂していかなければ何か違いことを言っていることになる。こうして少しずつ練って探っていくのが,実に楽しい。
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